『男子厨房に入るべからず』
この言葉は中国の儒学者である孟子(紀元前372年~前289年)の『君子遠庖厨』 からきています。
本来は「君子は厨房に近づかない」という意味なのです。
当時中国の厨房内では家畜が飼われており、厨房内で生き物を屠殺し、料理をしていました。
そのため君子(徳や仁のある身分の高い人)が鶏や牛などを屠殺する現場を目にしたり、
匂いを嗅いでしまうとその料理が食べられなくなってしまうため、厨房に近づくべきではない、
との配慮からきた言葉なのです。
それが日本では君子=男性、ととらえられ、「男は、炊事に手を出したり口を挟むべきではない。
あれは、女の仕事だ。」という考えが独り歩きして「台所のことは男がやるものではない」
「男が炊事なんてやるのはみっともない」という解釈になってしまったのです。
しかし、男性がみな料理をしなかったわけではなく、 平安時代に在位した、
第五十八代天皇の光考天皇(830~887)は、
大変な料理好きだったので、天皇に即位してからも自分で炊事を行い、その煙で部屋が真っ黒に
なっていたため、「黒戸の宮」と呼ばれていたほどだったそうです。